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  暗闇編 8. やる気がでない時
 

人間は「恥と名誉の動物だ」と言いますが、その通りです。たとえ、お金がなくても病気でも、名誉が保たれると何とかなります。しかし人から疑われたり、馬鹿にされたりするともう、いたたまれません。世の中で、本当にありがたいのは、「おまえは正しい」と一言、言ってくれる人がいることなのです。自分の価値、存在を認めてくれる人がいれば、その人のために生きられるのです。

そして、「この人のためなら何でもできる」と思う人があったら人生、勝ったも同然です。どんなに捨てたような人生でも、そうなのです。「自分を認めてくれる人」と同じように、「自分を犠牲にできる人」がいるかいないかです。もしその頃、自分の未来への夢や希望があったら、完全に立ち直っていたかもしれません。「将来、こうしたい」「未来はこうなりたい」と思うと、人間はイキイキできるものです。そこに自己犠牲的なエネルギーがあったらいいわけです。

金融事件を起こしてからというものは、すべての人からの信用を失い、職を失い、故郷や家族を失った私でした。そして生きる気力も逃亡生活で失い、未来への希望もなくなったのです。何度も死のうと思ったのに…それもだめでした。だめなときは、何をしてもだめっていうからです。結局、私は生きていました。しかし、私は「死」によって、一番大事な妻を裏切るところでした。逃亡生活をしている男のところへ嫁に来るのですからよっぽどしっかりしているのでしょう。ちょっと前までは「この人のためには、なんでもやろう。この人をなんとしても幸せにしなくっちゃ。」と思っていても、何をどうしていいのか分からないでいました。方向性がなかったのです。そのときの私は、まだ暗い闇の中にいましたが、この人のために生きようという生きるエネルギーが方向性を呼び込むことになるのです。

「方向」と「エネルギー」、この二つがあればもうその場で人生の勝利者なんです。この二つなんて簡単に言いましたが、そう、事実のほうはなかなかうまくいきません。かつての私は、死のうと思っても死ぬエネルギーもなく、「この人のためなら頑張れる」っていう生きるエネルギーが出ても、何をやりたい、何をやっていこうってことがないと、結局、出かかったエネルギーも萎んでしまいます。ちょうど、「お金があっても使い道がわからない」人と「やりたいことがあってもお金がない」人みたいなものです。両方とも同じようなものです。でも、方向性とエネルギーの片方でもかなりしっかりしたものであれば、まだ救いはあります。両方弱いと、ちっともうまくいきません。「方向」と「エネルギー」は、互いに強め合い、運命を変えていく原動力になるのです。

*人間にとって最も重要なのは「生命維持」です。それは人間でなくとも、あらゆる生物でもそうです。人間が人間として、大切に思っているのは「自己承認欲求」と「集団欲求」です。前者は人から認められたい欲求、後者は人と共にいたいのです。その二つが失われると、「深い絶望感」に襲われます。やる気もやる方向も、まったく見えなくなるでしょう。「共にいたい」と言ってくれる人が一人でもいれば人生は幸せです。しかしそんなことを期待しても、まるで始まりません。では、あなたが人の言葉に耳を傾けてあげて、そして心の底からうなずいてあげようではありませんか。そうすれば、あなたにはきっと、やる「方向」と「エネルギー」が湧き出てくるはずです。人は寂しいと病気になります。何のやる気も出ないとき、それは自分ばかりを見ている時なのです。

*私は今、多くの相談者がいらっしゃったら、まずその人の話を聞いてあげたいと思います。良い悪いは別として、まずその人を受容したいと思うのです。それはテクニックではなく、自分が逃亡生活時代に味わったことかもしれません。

   


 

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